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2019.06.27コラム知っていますか? グルコサミンやコンドロイチンのこと

ある日、私の外来に通院中の60代でO脚の女性患者さんが質問をされました。「友達がグルコサミンという薬を飲んでいるのですが、私も飲んだ方が良いですか?」
変形性膝関節症を治す効果のある栄養補助食品(補助剤)として、最近、グルコサミンやコンドロイチンが注目を集めています。
グルコサミンやコンドロイチンは、関節のクッションの役割をする関節軟骨の主要な成分であることがその原因のようです。しかし、これらの栄養補助食品は薬ではなく、病院では処方することは出来ません。また私は医師として、この女性患者さんのお尋ねに対してすぐに、「飲んだ方がいいですよ。」とはお答えが出来ません。確かに、全く無意味ではないでしょう。ただ、この栄養食品のどれだけが体の中に吸収されて、どれだけが血液にのって膝の患部まで到達するか考えてみましょう。薬を飲むと、まずは腸管から吸収されて体内に入ります。しかし、グルコサミンやコンドロイチンなどの物質は、アミノ酸や糖といったより小さな物質に分解されないと腸管からは吸収されません。そして分解されて吸収されたアミノ酸や糖が血液にのって運ばれ、たとえそのほんの一部が患部まで到達したとしても、今度はそれがまた最初のグルコサミンやコンドロイチンになるとは言えない訳です。したがって、それが患部の軟骨の成分になるとも言えないのです。またアミノ酸や糖は、他のいろいろな食品に大量に含まれています。したがって、あえてグルコサミンやコンドロイチンという補助食品でとらなくても幅広い食品から原料になるアミノ酸や糖は摂取できると思われます。

「知っていますか? 変形性膝関節症」でお話しましたように、この女性患者さんのような、膝関節の軟骨がすり減ったために膝の痛みを訴えて来院された方には、整形外科外来ではヒアルロン酸製剤(ヒアルロン酸ナトリウム)を膝関節に直接、関節内注射します。
このヒアルロン酸は人体に広く分布していますが、膝関節内では軟骨の成分でもあり、関節液の主成分でもあります。変形性膝関節症になるとクッションの役目をした軟骨がすり減りガタガタになってきます。また、歳をとってくると、関節の潤滑液(機械で例えるなら、油やグリス)の役目をしている関節液が枯渇したり、質が落ちてきたりしています。
これらを改善し、少しでも抵抗なく膝関節の動きをスムーズに動かす目的で、ヒアルロン酸製剤を直接膝関節に注射します。膝関節に注射するのは、針を刺すということで一時の痛みを伴いますが、確実に軟骨や関節液に届くことで効果があります。
前出のグルコサミンやコンドロイチンの栄養補助食品(補助剤)が、のんだ量のどれだけが傷んだ膝関節に到達するかわからないのと違って確実に役に立ち、治療効果が望めるという訳です。

グルコサミンやコンドロイチンを初めとして、近年サプリメントを摂ろうとされる方が増えています。自分の健康に対して気をつけている方が多くなっているあらわれでしょう。
サプリメントとは、もともと食事で摂りきれない「不足する栄養素を補給する」ということを目的に作られた食品です。栄養の偏りは、カロリーである3大栄養素(炭水化物=糖質、タンパク質、脂肪)と、それを代謝(利用)するために必要な副栄養素(ビタミン、ミネラル、食物繊維)の両者のバランスがくずれて発生します。肥満も栄養の偏りから生じます。カロリーを消費させるためには、それに見合った副栄養素(ビタミン、ミネラル)が必要であるからです。しかし現代食では、カロリー摂取量に見合った量の副栄養素が摂れていないのが現状です。その結果、エネルギーに代謝されずに余ったカロリーが蓄積してしまい、脂肪という形で蓄えられることになるのです。
食事が偏り、野菜などの副栄養素の多く含まれている食品がとれない場合、サプリメントを摂ることには賛成です。しかし、サプリメントは薬ではありません。薬のように、腰や膝の痛みをとることは出来ません。サプリメントは病気に直接働きかけるのではなく、身体全体の自己治癒能力を高める役目の栄養補助食品と考えて摂ると良いでしょう。