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2019.06.27コラム知っていますか? 成長痛

小児整形外科の専門外来をしていると「最近、子供が両足を痛がるんですが…。成長痛ですかね?」という質問をお母さんから受けることがあります。

成長痛という医学専門用語は特にありませんが、成長期には原因なく膝周辺の痛みを訴えてこられる子供さんがよくおられます。
これらはお母さんに尋ねてみると、夕方から夜にかけて両足の膝から足くびまでが全体的にだるくて痛いと子供さんが訴えていることが多いようで、ご両親からしてみればどこか悪くなったのではないかと心配されて、時には救急外来に来院されることもあります。
しかし、患児は翌朝にはケロッとしていて、幼稚園や小学校で遊んで帰ってきて、また夜になって痛がることもあり、いわゆる筋肉や靭帯の疲労であったり筋肉痛が原因になっていることが多くあります。
子供のうちは筋肉や靭帯はなかなか丈夫ではないのに、幼稚園や学校で走り回ったり体育で動き回ったりしており、これを大人に換算して考えてみると相当な運動量を毎日こなしていることになります。子供には疲労など無いと思いがちですが、結構、疲労性の足のだるさを夜になったら訴える子供さんが多いのです。

子供の骨格から見てみると、骨と筋肉の成長のスピードが違うことが痛みの原因になります。子供の下肢の骨は、成長軟骨の豊富な膝周辺でどんどん新しい骨が作られて身長が伸びていきます。そして子供の筋肉は、骨に引っ張られることにより成長します。
成長期には、膝周辺の骨がどんどん伸びることで、膝周辺の筋肉もどんどん長くなります。しかしこれは、1年に何センチも身長が伸びるような年齢では、骨の成長速度に筋肉の成長が間に合わず、筋肉や靭帯に柔軟性がなくなり、しばしばオーバーワークになってしまって膝周辺の筋肉の痛みが出てくることがあるわけです。
以上のことを考えると、子供の成長痛は、成長期には避けては通れない、『成長期の自然現象』なのです。
これまでお話したように多くの『成長痛』は、筋肉の疲れや、骨と筋肉の成長速度の違いからきたもので、運動のし過ぎを避けてすこし休ませて様子を見ていれば良いものですが、まれに成長期であるがゆえに発生する障害につながる場合があります。
先ほどお話した子供の骨の膝周辺に多い成長軟骨は、柔らかい軟骨でできているために、ちょっとした衝撃にも傷つきやすく、なかには軟骨の骨折を起こしてしまう場合もあります。
こうなると激痛が生じるばかりか、その部分の骨の成長が止まったり骨が変形したりすることがあり、将来に影響を残してしまうことがありますので激痛であったり、1日中痛がるときは専門医に診てもらうことが必要です。

また、子供の股関節や膝関節、足関節の表面にある関節軟骨は厚く量が多いのですが、非常に柔らかいために傷つきやすい性質を持っています。
たとえ軽い運動であっても、同じ動作を繰り返すことが多かったりすると、関節に負担がかかって関節軟骨が傷ついて、その関節に炎症が起こり痛みが出ることがあります。
すると関節に水が溜まってきたりもします。
これらは、運動会シーズンや遠足シーズンにしばしば股関節に発生して、歩けなくなったといわれて来院されることがありますが、こういった場合はきちんとした診断のもとに、とにかく関節への負担をとって安静にしていることが必要となります。

最後に、前出の『成長痛』とは異なりますが、成長期が終わる(軟骨の成長が止まる)中学・高校生のころには、徐々に筋肉も強くなるために、こんどは逆に運動量が増加して(筋肉の強さが骨よりも増して)疲労骨折を起こす場合もあり、こういった場合は速やかに整形外科の専門医で的確な診断を受けて治療をしてもらいましょう。